僕が新入社員だった頃。
なんにもできないのに「やってやるぜ!」みたいな新人特有のノリだけあった頃。
大学で小難しい機械工学を学んで意気揚々とメーカーに入社したのに
初年度に僕にあてがわれた仕事というのが
単純作業でした。
もうそれは教えれば猿でも出来るんじゃないかと言う程の単純作業で
機械にシートをセット
→ボタンを押す
→カットされて出てきたのを取り出す
→再びシートをセット
みたいな感じでした。
本当にこれを6時間やり続けたりします。
ちなみに、工場での現場作業で周りはオバちゃんばかり。
機械の使い方や現場の苦労を知るために試用期間中や数ヶ月この仕事を覚えるのは大事なことだと思うのですが、すぐ覚えられるボリュームしかないのに、いくら人手不足だからって、こんなのを1年以上もやらされると
さすがに「なんのために大学いったんや、、」と思わざるを得ませんでした。
「世の中こんなもんだよ」と語るおっさん同僚の言葉は、僕の未来を暗く照らしてくれました。
単純作業中はある意味、一種のフロー状態となり
作業スピードも日を重ねるごとにプロ化していきました。
何も考え無くても正確に機械の設定をし、ベテランのパートさんと同等以上の生産性を叩き出すような全自動マシン化した頃
僕がよく思っていたことを下記にまとめておきます。
・なかなか時間が経たない(時計は見るべからず
・ずっと屋内で季節感ゼロ。閉鎖的な空間なので外の天気すら不明。
・毎日同じ人間としか会わない。平日ほとんど喋らない。いきなり話しかけられると声が出ない。
・ものすごい肉体疲労。当時23歳だったのに水曜日ぐらいで体が重かった。
・物事を考えなくてよいので、脳がどんどん退化するのを実感する。
大学生の頃、まだ働いたことない頃、
「会社の人間関係とかダルそうだから、人と関わらなくて一人で黙々とできる単純作業がいいかも!」
と軽口を叩いていて
「工場内で流れてくる刺身にタンポポを乗せる仕事」とか
「お城の前でやってきた勇者たちに『ようこそ!』と声を掛ける仕事」とか
「エレベーターの手すりを拭き取る仕事」とか
「そんなんでいいや!」とかほざいてた自分をぶん殴りたい。
まぁしかしですよ。
この工場での単純作業に向いている人も世の中にはいるハズです。
例えば
・ガチなコミュ障
・熟女が大好き などなど。
あとは小説家志望の方も良いかもしれません。
頭の中はヒマなので話を考える時間は無限にあります。
当時の僕の空想を文字化していたなら小説数冊分にはなったと思います。
また、工場勤務の最大のメリットは残業がキチンとつくことです。
深夜手当て、休日出勤手当て等、入社1年目で驚くような手取り額をもらったこともあります。
長らく働いているオバちゃん達はプライドを持ってそれなりの仕事をしてはいるものの、新しいことを覚えることをすごく嫌うので色んな機械の使い方を覚えて色んな作業が出来るようになれば、パートやバイトで入社したとしても重宝されて評価されるようになると思います。
ちなみにその後、僕は現場の管理者として機械を熟知した上でオバちゃん達を動かす司令塔になれればいいなと思ってそこそこ頑張ってたのに
いきなり全く関係ない営業部へ異動となりました。
自社で作ったものを売る営業スタイルではなかったので本当に無関係なのです。
「世の中こんなもん」
おっさんの言葉は本当に沁み渡りました。
完